偽りの天使



こつ、こつと靴音が響く。

基地内は意外にも真っ白だった。壁沿いに観葉植物をちらちら見かけるが本当にそれだけだ。蛍光灯も幾つか切れかかっていて、ここを拠点に大事に扱っているのかと思えばそうでもなさそう。ただただ靴音が虚しく響き、会話も無く。

「……なあ」

不意にロイが口を開いた。

「初日にも聞いたんだけどさ」


――どくん。


「お前、なんで羽根があるのに飛べないんだ?」

またこの質問だ。

「ピット?」

どうしてこの人は学ばないんだろう。

分からないんだろう。

「……本当」

自分自身、嘲るように口をつく。

「どうせ飛べないのに、なんで羽根があるんだろうね」
 
 
46/110ページ
スキ