偽りの天使
こつ、こつと靴音が響く。
基地内は意外にも真っ白だった。壁沿いに観葉植物をちらちら見かけるが本当にそれだけだ。蛍光灯も幾つか切れかかっていて、ここを拠点に大事に扱っているのかと思えばそうでもなさそう。ただただ靴音が虚しく響き、会話も無く。
「……なあ」
不意にロイが口を開いた。
「初日にも聞いたんだけどさ」
――どくん。
「お前、なんで羽根があるのに飛べないんだ?」
またこの質問だ。
「ピット?」
どうしてこの人は学ばないんだろう。
分からないんだろう。
「……本当」
自分自身、嘲るように口をつく。
「どうせ飛べないのに、なんで羽根があるんだろうね」