偽りの天使
無線を使えば奴らにも筒抜けだ、それ自体はさっきの通信が証明している。
「ファルコ! 何とか引き剥がせねえのか!」
「っ、無茶を言うな!」
光線銃を躱して顔を顰める。
「てめえを乗せてるお陰でローリングも宙返りもできねえってのに」
大きくハンドルを切りながら、
「大体、あれは曲がりなりにも“俺”だぞ!」
「こんな時に自画自賛かよ!」
「うるせえエースパイロット嘗めんな!」
漫才をしている場合ではないのだ。何とか隙を作らないことには。
……ピット!
はっと目を開いた。
空中の真っ只中マークは外れている。ピットは体を捻って両翼を広げると、滑空の体勢に移った。目指すは、浮遊大陸にある敵軍基地。
「……、」
無線は使えない。
誰かの息遣いひとつ聞こえない、筒抜けと知って切ってあるんだ。
誰かが声を上げて取り乱さなかったのは忘れられたかのようで寂しい気もするが、この場合は寧ろ好都合。お陰様で敵の追撃を受けることなく難なく着地。ピットは直ぐ様近くの茂みに身を隠してそれから空を見上げる。
……皆、大丈夫かな。