偽りの天使
ピットの目前を黒い羽根が舞った。
「こんにちはぁ」
赤い、目。
「ピット!」
次に視界に映り込んだのは自分のものと思しき白い羽根だった。ぐらり、空が反転して太陽の光にうっと瞼を瞑る。次の瞬間開けばそこに広がる逆さまの世界。
「ぁ」
鳩尾に蹴りを入れられた。まずい。
落ちる。
「くそっやられた!」
飛んできた矢を剣で払い弾いて睨みつける。
「ファルコ、っうわあ!」
予告なくアーウィンが大きく右に旋回するのでロイは跪いて。
「何やってんだよ、早くピットを」
「馬鹿かてめえ後ろを見ろ!」
ロイは顔を顰めて後方に鋭い視線を送る。
「おやおや」
しつこく追い回しながらその人物はくすっと笑う。
「そんなに慌てて。一体何処へ行くつもりですか?」