偽りの天使
肝心の彼はというと特に此方と話し込むこともなく、フォックスのアーウィンまでピットを運んだところで一瞥くれてさっさと飛んでいってしまった。人をからかうような言動の目立つ彼ではあるが興味のないことにはとことんドライなんだな。
「ったく。ヒヤヒヤさせやがって」
苦笑いがこぼれる。……そりゃこっちの台詞だって。
「皆」
不意にルーティが口を開いた。
「見えてきたよ」
――まるでレイアーゼのように大地から抉り出し、空に持ち上げられたかのような小さな浮遊大陸でその大部分は黒塗りの低い建物が占めている。
本当に聞いたままの姿だった。
「レーダーに反応は?」
「……いや。不気味なくらいひっそりしてやがる」
先行するのはルーティを乗せたウルフのウルフェン。
「先読みされて、実はもぬけの殻でしたーとか」
「はあ? ふざけんな!」
「ダークシャドウが出入りしていたことは確かなんだ」
上空をゆっくりと旋回しながら、
「例え無人だったとしても一度立ち入って調査をしないことには」
ビリッ。頬を静電気のようなものが走ってピットは小さく肩を竦めた。
……その刹那。
「前方より攻撃反応! 全機、回避!」