偽りの天使
……おかしい。
天使の翼なんてのは確かに見るのも触れるのも初めてだが、筋肉がまるで無いじゃないか。こいつ自身胸筋を集中して鍛えてあるようには到底思えないしそれで空を飛ぼうってのは無謀というものだ。でもこいつは今、難なく翼を動かしてみせた。筋肉量は関係無いとして、だとしたらどうして翼を動かせるんだ?
こいつが否定したように筋肉が無いのでは飾りも同然だ。
「あのー」
見たところ、空気抵抗の調整が利かないというわけではないようだ。
まさか“飛べない”というのは翼の問題じゃなくて――
「もうそろそろいいですか」
ぼうっと考えを巡らせているものだからずっと触っていた。
「わ、悪い」
ネロはぱっと手を離す。
「ボクの羽根そんなに気になる?」
ピットは振り返って訊ねる。
「……まあ」
獅子は我が子を崖から突き落とすというが。