偽りの天使
思ってたよりもきつい。レッドは涼しい顔をしているのに肝心のピットはというと飛ばされないように腹這いになって翼に必死でしがみつくという有り様。
「そうか?」
フォックスは片手で操縦機器の操作を行い、速度を落とす。
「これでも遅い方だぞ?」
「空気抵抗を受けてるんじゃないかな」
帽子を押さえながらレッドが言うが残念ながらそれどころではない。
「ネロ」
タイミング良く飛んできたところをレッドが呼ぶと、ネロは黙って高度を上げてコックピットを跨ぎ、ピットの掴まる左翼へ。難なく降り立った後、歩み寄って後ろから首根っこを掴んでひょいと持ち上げ機体に下ろす。
「た、助かった」
まさかこんな序盤から命の危機を感じることになるなんて。
「お前その翼は動かせないのか」
「失礼な! 飾りじゃないんだぞ!」
すかさず返して、ピットは翼を軽く羽ばたかせる。
「見せてみろ」