偽りの天使
ドクン。と、心臓が跳ねた。
「真実を認めたくない」
……分からない。
「だから目を背け遠ざける」
この人は。
「君は臆病なだけだ」
何を、言って――
「その上で」
――自分を甘やかせているんだよ。
頭の中で何かが弾けた。次の瞬間背負っていた神弓を咄嗟に手に取って駆け出し、身動きひとつしないマルスの元へ。刃の部分を首元にあてがったがマルスの体勢は依然として変わらず、動じた様子さえ見せずに。
「……ピット」
心臓が鼓動を打つ最中。
「嘘は、誰の為にもならない」
マルスは言った。
「いつか必ず向き合わなければならない時が来る」