偽りの天使



「はよっす」

食堂。訪れて、朝食を乗せたお盆を受け取って席に着いたところ、珍しいことにネロに声をかけられた。その後ろには彼のトレーナーであるレッドもいる。

「相席してもいいかな」
「どうぞどうぞ」

ロイは他の剣士組と一緒に朝食を摂っている。そんなわけでピットもあっさりと席を譲った。椅子を引く音を耳に、ちらりと目を配ればネロの妹たちは同じポケモンであり同性のリムとピチカと一緒に話に花を咲かせている。

「よかったの? 一緒じゃなくて」
「抜かせ。女子の輪に入って居座るほど空気が読めないわけじゃない」
「ボクだったら気にしないけどなぁ」

分かってはいたけど、戦闘部隊は男ばかり。

「……貴重だと思うよ?」

ネロはふんと鼻を鳴らして箸を手に合掌。

「いただきます」

無視か。

「色々あるんだよ」

レッドが肩を寄せてこっそり。

「あっなるほど」

ピットは手のひらにぽんと拳を置いて、

「ボクでよかったら協力するよ、天使だし」
「口に物入れて動かせさっさと食事を済ませろ」 

ひい。フォークが垂直に突き刺さった哀れなトマトを目に、ピットはさあっと顔を青ざめて朝食と向き合った。
 
 
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