偽りの天使
……我ながら。
変な夢を見てしまった。
「ぅ……」
音を立てて全開になるカーテン。朝の日差しが無慈悲に襲う。
「おはよう、ピット!」
変なというか大変な夢だ。今日がその日だというのに。
「……?」
悪い夢を見たから今日が不安だ、なんてただの理由付けにしかならない。
子供じゃあるまいし。
「どうかしたか?」
上体を起こしてからもぼうっとしていたことが気にかかったのだろう、ロイが声をかけてきた。単なる眠気ではないことを悟り、少し暗めのトーンで。
はっと我に返った。
「う、ううん。何でもない」
今日という日はもう来てしまったんだ、仕方ない。それでもほんの少し気掛かりで不自然になってしまった。いつもの調子でないことくらい見通されるだろう。
……と思ったのだが、ロイは何ひとつ問い質さなかった。
「そうそう、昨日はよく眠れたか?」
ロイは寝巻を脱いでいつもの服の袖に手を通す。
「俺、緊張してさぁ、あの後何回も起きちまって……」
へらへらと。
聞こえなくなる。いいよね、キミは。
……ボクと違って悩みがないんだからさ。