偽りの天使



さすが。現リーダーよりも頭が回るな、こいつは。

「というかですね」

ぱっと振り向いたリンクはじと目だった。

「な、なんだ」
「貴方が未来を見ればいい話じゃないですか。その目で」
「簡単に言ってくれるな」

同じ目で、返す。

「多少は回避できるのでしょう」

訂正。単純な策に乗りたがる辺り、極端だな。

まあ確かにそれで正しい選択肢を掴めるのなら問題はない。私がこの目で見たと伝えればルーティ達も納得がいくはず。とはいったところでこの目、明確にこんな未来が待ち構えているぞと教えてくれた試しが無いんだが……

色々と言ってやりたいところだがとりあえず今は言葉を呑んでユウは立ち止まり、瞼を下ろした。意識を集中させている、それを知ってリンクも邪魔にならないよう口を閉ざし傍らで目を見張る。


心臓が。初めは小さく、徐々に迫るように。大きく。


――ドクン。


次に瞼を開いて空を仰いだ時、ユウの瞳は赤く染め上がり能力の発動を許した。

傍目に見ても目まぐるしい変化である。一方でユウの瞳には仰いだ紺碧の空などではなく、暗転した画面が映し出されていた。やがてそれは白く点滅を繰り返していたが不意に白の画面で留まり、映像は白い雲を抜けて青空を映し出す。

ふと見上げた太陽の光に目が眩んだ。

次の瞬間、映像は後ろに引かれるようにして傾く。いや、これは。


ノイズが走った。映像の終わり。最後に映し出されたのは舞う黒い羽根と。

誰のものとも分からない、不気味に口角が吊り上がった口元――
 
 
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