偽りの天使



ダークピットは裏側の世界、亜空間へと降り立った。

「それより、どうする」

土産話と称した含みのある発言が耳に焼き付いて離れない。脳裏を過るのは事情を知りながら知らぬ顔で大事に仕舞ってきたあの人の顔。彼らの内の何人かはもう、気付き始めているのだろう。知って、あの発言を仕掛け此方の出方を窺った。

「奴は忠告だと言っていた」

チッ。

「ただの気まぐれとも思えないんだが」


政府の犬風情が――


「……そうですね」

リンクは弓を仕舞って腕を組む。

「タイミングとしても、此方が明日浮遊基地に奇襲をかけることを知っての行動と考えるのが無難でしょう」
「じゃあこれは奴らの作戦か?」
「いいえ。それを踏まえてもまだ彼の独断だったかのように見受けられます」

リンクは歩き出した。

「報告はするのかと聞いているんだ」
「しませんが」

あっさり。続けて、

「彼らは既に攻撃に備えている。此方の予定通り奇襲をかけられればすぐにでも応戦できるように……そうでなくとも出方を渋れば、持て余した軍を使って逆に攻め入ってくるでしょうね」

ユウは真横より少し後ろをついて歩く。

「私情だったにしてもタチが悪いですよ彼の行動は。だから今日見たことは他の誰にも口外せず、二人だけの秘密にしましょう」
 
 
16/110ページ
スキ