偽りの天使
暗闇を走る銀の閃光。すっと顎を引いて躱し、同時に窓の縁を蹴ってその場を離れ翼を大きく羽ばたかせる。背を反らし弧を描くように舞いながら音もなく襲い来る閃光を躱し、続け様の閃光を今度は正面に向き直って翼を目一杯広げ、自身を包み込むように翼を呈して防御。終始、その顔には微笑を浮かべたまま、攻撃が止めば翼を広げてその閃光を放った人物をすっと見下ろす。
「……成る程。貴方の仰有る通りでしたね」
男は静かに弓を下ろした。
「使い方が上手くなったのではありませんか?」
その男の後ろから出てきた青年は男を尻目にふんと鼻を鳴らして視線を流し、先程の少年を見上げ視界に捉えると同時に瞳を金色に瞬かせた。
「……あはぁ」
少年は悪びれた様子もなくへらへらと、軽薄な態度で笑いかける。
「失敗失敗。あんたが居たんだっけ」
――青年の正体はユウ・ブラン。並ぶ男はリンクだった。
「運が悪いねぇ」
月明かりに浮かぶ天使のシルエット。空を支配するその翼は決して白くない。
ふわり、舞い落ちる。一枚の黒い羽根が示す、その正体はダークピット。
「先手を打つなとは言いませんが」
リンクは目を細めて質問を投げかける。
「何か不都合がお有りで?」