偽りの天使
どうして。自分たちは彼らの能力より勝っているはずなのに。
いつも戦況をひっくり返される。そこにあるのはいつも、独りじゃない。
戦士は消耗品。
パートナーとは互いを殺さず生かし、どちらかが欠けても一方が使命を果たす為にある。それは結果として、未来のために。
俺たちと変わらない。
同じことだと、そう思っていたはずなのに。
「――通達」
無線から声が聞こえる。
「禁忌兵器の損傷により撤退命令が下された」
ダークピットはゆっくりと視線を向ける。禁忌兵器と称された少年は死角より斬り落とされた羽根が、墜落の最中泡のように消えゆく様をじっと眺めていた。
青白いブロックノイズが侵食し、粒子となって空気中に溶けていく。
「繰り返す。撤退命令が――」
「自業自得だっつーのによぉ」
ダークフォックスの嘆く声が阻む。
「どうせまた俺たちが怒られんだろぉ?」
「つべこべ言わずにさっさとゲートを開け!」
「へいへぇい」
「……あの」
雑音に混じって聞こえてきたのは。
「ピット……痛かった、ですよね……」
「そうでもないけどねぇ」
物の見事に斬って落とされたが、そもそもの紛い物に痛いも何も、
「……ごめんなさい」
ダークピットは口を噤む。