霧雨の視界
二人が飛び退いた、その直後。
元居た場所に幾つかの黒い棘が地面から真っ直ぐ突き出てきた。
それらは不意に半ばから直角に、だけど折れないまま曲がって棘の先端を此方に向けると、狙いを定め襲いかかるように伸長して。ユウはそれを片手をかざし、瞳を金色に瞬かせることで念力を発動すると目前に留めて阻止。
続けてリオンが傾けてかざした左手に右手をクロスするように重ねて、手のひらから青い光をまとうまん丸とした波導弾を生み出し、連続して放つ。
ずだん、ずだんと音と煙をあげて。
「あっはははは!」
ちょうど煙が晴れた頃。不快な笑い声が路地裏に響き渡ってユウとリオンは顔を上げた。真っ白な空をバックに、空中で悠々と足を組んで見下ろす男。
「さすがだよ。褒めてやる。全部全部躱しやがった」
「ふっ……くふふ……凄いねぇ無傷だよねぇ」
その男の後ろでもう一人。鎖を引いた首輪に繋がれて、初めに笑い声を上げた男の首に腕を絡ませ緩く不敵な笑みを浮かべている。
――よく似ている。だけど違う。
間違いない。
「ダークシャドウか……」
性格は先程の台詞から全く異なることが窺える。
知り得た特徴に誤りはない。名があるのだとすれば、恐らく。
「ダークルカリオだ」
「……ダークミュウツー」
瞳を赤く瞬かせて。ダークルカリオが口角を吊り上げた。
「以後、お見知り置きを」