霧雨の視界
――あれから。
自身のこの目があの時の惨劇を予知していたということを元DX部隊のメンバーを集めて打ち明けた。一人だってどうとでもなると言ったのにリオンの奴は隣にいると言って聞かず「貴殿の痛みは私の痛みだ」なんて格好まで付けて。
「ふん。躾が足りないようだな」
「仕置きなら歓迎するぞ?」
驚いたことに誰も責めようとしないのだから拍子抜けだった。
それというのも。
「人の立場で物事が考えられないほど馬鹿じゃないよ」
「っ馬鹿で悪かったわね」
リムが膨れたのは言うまでもなく。
「ゆ、ユウ……あのね」
申し訳なさそうに話を切り出すのを見て私はふんと鼻を鳴らした。
「昔の話だろう」
「でっでも」
「いつまでも引きずるな。耳が腐る」
リムはしゅんと肩を落とした。
「単純に、彼は素直じゃないんだ」
「えっ?」
「当人はそれよりも泣き顔を見られたことを気にしているぞ」
「ニヤニヤしてるところ悪いんだけど、後ろ」
……回し蹴り。
「あふっ」
雨はいつの間にか上がっていた。
光を差し、視界には世界が色鮮やかに映り込んで。
次はどんな未来を見せてくれるのだろう。
「貴殿の笑顔が見れてよかった」
……私には。
お前と生きる現在(いま)が温かい。
end.
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