霧雨の視界
憧れだった。
死を恐れず誰かの為に立ち向かえる彼のことが。
同時に嫌いだった。
恐れて踏み出せない自分とはあまりにもかけ離れていて。
――ラディス。
私は救えただろうか。
問えば、お前はきっと優しい言葉を返すのだろうな。
優しく頭を撫でながら。いつか見た、変わらぬ笑顔で。
今なら言えるよ。
お前だけは死なせたくなかった。助けたかった。
自分にも他人にもバカ正直なお前のことが大好きだったよ。
「……素直じゃないな」
リオンが小さく吹き出した。
「貴様、また勝手に心の内を探ったな」
「探らずとも聞こえてくるものだよ、強い想いはな」
「はっ成る程な。それならこれはどうだ」
――お前を助けることが出来て本当によかった。
私の、初めての誇りだ。
ありがとう。
「……ん」
リオンは微かに頬を染める。
「き、聞こえなかったな」
「嘘をつくな」
「もう一回」
「今度は口で言わせてみるんだな」