霧雨の視界
「私のこの目は“現在(いま)”を見る程度の能力なんだ」
何となく、想像した。
自身の能力を現在を見る程度と言ってのけた彼がどれだけ辛かったのか。
――化け物のクセに。
「……、」
「だからユウの想いは通じても、過去に触れたその人たちが何を思っていたかまでは分からない」
でも、とリオンは続ける。
「ユウのことを恨んでいないと思う」
――思わず、顔を上げて見つめた。
「その人たちが死に至ったのは本当にユウのせいだっただろうか」
リオンは首を横に振って、
「私はそうは思わない」
「……だが救えなかったのは事実だ。私は、見殺しにした」
「それは違うよ、ユウ」
私はただ見つめるばかりだった。
「……ユウの能力は人の運命を定めて殺めるようなものなどでは決してなく、別の未来へ繋いで救う為のものだったんじゃないか」
目を、開く。
「今まで責任を感じて傷付けてきた。だから彼らはきっと、こう思っているよ」
リオンは何の気なしに頭の上にぽんと手を置いて言った。
「“貴殿が”救われてよかった、と……」