霧雨の視界
――それから、呆れるほど泣いた。
声を上げて大袈裟にとまではいかないが、今までそうしなかった分、もしかしたら枯れてしまうのではないかと錯覚してしまうくらい存分に涙の泉を溢れさせた。
それでも、五分かそこいら経ってくると幾分か落ち着いてきて、リオンがからかうでもなくただ黙ったまま後頭部を優しく撫でるのを、腕の中、胸元に額を押し付け凭れるようにしながら感じつつ、ふと。
「……リオン」
静かに、口を開く。
「話を聞いてくれるか」
――十四年前の話をした。
未来を予知していながら大事な人を救えなかったこと。
罪の意思に苛まれながら、今のこの瞬間まで打ち明けられずにいたこと。
「……、」
リオンは何も言わなかった。
何だそんなことか、と笑うこともなければ取り分けて声を荒げることもなく。後者に至っては彼の性格からして絶対的に確率の低いものだったがそれでも、前者より今のような、ただ何も言わず静かな時間が流れていくのが、いつの間にか身も心もボロボロになっていた自分にとっては最善だった。
「ユウ」
リオンが口を開いたのは長い間をあけてようやくのことだった。