霧雨の視界
平日の日中だというのに、都会とだけあって変わらず人に溢れている。
忙しなく。
ざわざわと。
車のクラクションが一定のリズムを刻むように鳴り響いて煩わしい。周りの音に微かな苛立ちを感じながら。隣を歩くパートナーの顔色が次第に悪くなっているような、そんな予感にさえこの状況下では気付けずに。
「ッ、」
頭痛――この予兆を私は知っている。
「……ユウ?」
どくん、どくんと繰り返し心臓が跳ねている。
……まだだ。まだ、見えない。
やめろ。
見せるな。
もう、うんざりだ――!
「ユウ!」
はっと目を開いて顔を上げる。
変わらず行き交う人々。空の色は変化を見せない。いつの間にか頭を抱えて俯いていたようだ。額に当てていた手をそっと離し、少しだけ汗を感じて湿った手のひらをじっと見つめる。震えを知る前にぐっと握って閉じて、小さく溜め息。
――今、目が赤くなって。
「気にするな。……大丈夫だ」
ユウは触れていたリオンの手から逃れるように、歩きだした。