霧雨の視界



拳が首筋を、蹴りが頬を。

互いに掠めて構え、紫の光弾と青の波導がぶつかり合う。エネルギーが膨れ上がり爆発を起こすと同時に退いて着地。

喉の奥を焼かれているかのようで呼吸が儘ならない。

「……、」

最中、ばちばちと脳裏を電気のようなものが走って映像が映し出された。

よりはっきりと、よりくっきりと。もう変わらぬ、躱せぬと忠告するように。


――どうして。良くない未来を見るばかりで貴方は何も出来ないの!

そんなの人殺しも同然じゃない!


……今もあの声が、耳に焼き付いて離れない。

だけどその通りだった。あの時、少し手を伸ばせば変えられたかもしれない誰かの未来を、己の命可愛さに目を背け見放して。

一切の意識も向けられることはなく。決して触れず、関わらず。


あいつは恨んでいるだろうか。

もしもここで未来を変えられたとして、それまで見放されてきた命達は。


私を許し、救われるのだろうか。


……雨音が遠退く。最期の時が近付いていた。

リオンの体がふらり揺れたのを見て同時に駆け出す。距離はそう遠くなかったはずなのに、自分を含めた全ての景色がスローモーションとなって再生された。

ゆっくりと距離が縮まっていく。最中、波導を纏った拳を引いていくのが見えて。

間髪を容れず、右脇腹から此方の左胸へかけて拳が飛んできた。ここまでは映像と同じ、右へ体を流して躱しつつ背後へ回り込む。直ぐ様腕を薙ぎ振り向いた、

その腕の下を潜って、私は――
 
 
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