霧雨の視界



――今なら、分かる。

「くっ」

それでも怖いさ。

未来は変えられないかもしれない。無駄かもしれない。こうして足掻いた結果は、救いではなく最も恐れてきた“巻き添え”による自身の『死』かもしれない。


……それでも。

寂しそうな笑みを浮かべて返されたあの日の言葉は。


「リオン!」

腕の薙ぎ払いを蹴りで返して後方に飛び退く。

「貴様の本音を私に聞かせろ、叫べ!」

地面を蹴り出して数秒とかからない内に此方の領域へと踏み込み、繰り出された回し蹴りを大きく後ろに仰け反って躱す。そのまま後転の姿勢に変えて後退、追撃の拳と踵落としをそれぞれ躱したが最後、振り向きざまに繰り出された腕の薙ぎ払いだけは自身の腕をクロスさせたその上でバリアを薄く張り、受け止めて軽減。

「……死にたくないのだろう!」

リオンの瞳は変わらず揺らがない。

「嘘をついて虚勢を張るな」

ぎりぎり、ぎりぎりと。

「自分の手で自分を殺めるな!」

頼む。


「生きろ!」 


届いてくれ――!
 
 
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