霧雨の視界



――ユウ。私はな、ここにいる皆が大好きなんだ。貴殿も含めて。


雨音が遠く聞こえる。


――私がそうすることで彼らを傷付けずに済むというのなら。……私は。


「……!」


――本望だよ。


反射的に向かってきた拳を蹴り上げ、怯んだところを胸ぐらに足を乗せて強く蹴り出した。空中で後転、そして距離を置いて着地。

……戦士として情けないな。きっと誰もが直面して乗り越えた、はずなのに。


死にたくない。


「……なるほどな」

様々な未来をその目にしながら。様々な現実を目の当たりにしながら。

自分だけはそうなりたくないって思っていた。


狡い生き物に成り下がったものだ。

距離を置いて、突き放すのも。全ては自身が『死』に関する事柄に一切の関わりを持たないその為だった。だから、大嫌いだった。

『死』は覆せない。絶対的なそれへと繋がる未来を見通す、この能力(め)が。


……全部、同じだったんだな。


時として言葉は凶器となり、人を殺す。人の『死』へと繋がる可能性に溢れた人の本音、言葉の羅列から決して逃れることの出来ないその能力(め)が。

全てを悟りながら。どうすることも出来ない自分のことが――
 
 
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