霧雨の視界



構え、リオンが動くよりも早く地面を蹴り飛び出したユウの体は映像にノイズが走るかのようにぶれて消失……しかし次の瞬間、リオンの目前にその姿を現すとふわりと浮いて後転、と同時に顎を素早く蹴り上げて。

その隙を許してはいけない。ユウはまたすぐ姿を消失させて、リオンの背後より少し離れてふわりと地面に足を付いた。刹那その振り向き様リオンは腰の構えから両手を突き出し、サッカーボール程に膨張した波導弾を勢いつけて放出。

「くっ」

それが触れるよりも先、ユウは自身を包むだけの紫色のバリアを張って防衛。

攻撃、止まず。飛び出したリオンが波導を纏った拳でバリアに殴りかかり、続け様に回し蹴りを仕掛けた。ピシッとバリアがひび割れてユウは眉を寄せる。

更に勢いをつけて二度目の回し蹴り、続けてリオンはバリアに足を付いて駆け上ると軽く蹴って後転、空中へ。


――来る!


瞳が赤く迸る。映し出した未来は、青の一線。

防壁(こいつ)の強化は間に合わない。いや、間に合ったところで突破される。

「ッ……」

考えている場合か!

バリアを解除させて両手を突き出す。その動作はリオンとほぼ同時。

次の瞬間リオンの手のひらからは青の光線、ユウの手のひらからは紫の光線がそれぞれ放たれた。ただの一線ではない、全力に近く力を注いだそれは直撃を許せば一溜まりもないであろうエネルギーを秘めている。

正面衝突、ぎりぎりと押し合うが一方でリオンは表情を変えない。

……こんな状況下で。能力を駆使しておきながらそれがほんの僅かでも表に出ないはずがない。それが意味するのは、こいつは見知らぬ感情や何かに突き動かされて戦っているんじゃない。――無感情。無意識。


……何も感じて、いない?
 
 
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