霧雨の視界
そう警戒を張って歩くわけにもいかない。
「ユウ、何か飲むか?」
本当に彼らであれば少しのそれで感付いてしまう。あくまでも一般人らしく。
「そうだな……」
街の調査という一見すれば容易い任務も、相手に悟られるなと言われてしまえばそれだけで難易度はぐっと上がる。聞き込みなど、決まった動きを必要としない自分たちの能力はそういった意味でも重宝されているのだろう。
「ソーラだな!」
少し悩んだ末にユウがしゃくってみせると、リオンは自動販売機の前に立って小銭を投入し、ボタンを押した。そうして取り出し口の中へと落ちてきた炭酸飲料を、その場に屈んでから手に取って立ち上がりつつ、微笑して差し出す。
「刺激の強いものがお好みか……」
「……何の話だ」
ユウは一切視線を与えずにキャップを捻って。
「我が同志よ!」
「貴様の大事な眼に振りかけてやろうか」
全く、緊張感がない。
今回に限ってはこのくらいがちょうどいいのかもしれない。だが、彼の場合はどの任務においても毎度毎度あの調子で此方の調子が狂う。
「炭酸プレイですか! 是非お願いします!」
いや。それとも単に自分が気を張りすぎなのか。
「……、」
見つめるリオンの視線に、ユウは気付かず歩を進めた。