霧雨の視界
ユウは鼻に腕を押し当てて庇い、目の前に立ち塞がる砂煙を睨み付けた。
――エックス邸、一階。エントランスホール。
「は……せっかちな奴だな」
ようやく砂煙が晴れてきた頃、微かな雨音を耳にしながら。
「主人の帰りが待ちきれなかったか?」
ユウを迎えたのは覚醒を許されたリオンだった。
普段と何ら変わりのない橙に燃ゆる瞳がじっと見つめて。間もなくして構えたが刹那攻撃を仕掛けるのは早かった。
発言を待たず、また、それに答える様子もなく拳を腰に添えて突撃。
「っ、」
一定の距離を縮めたところで右拳がぐっと引かれ……
――フェイントか!
次に突き出されたのは左拳。強烈な一撃が襲いかかる、ユウは眉間に皺を寄せつつ自身の腕をクロスさせ、瞳を金色に瞬かせて超能力を発動。紫の波動がユウの足下を中心に広がり、リオンの拳は磁石のように反発して押し返される。
「ユウ!」
こいつはあろうことか扉を破壊したのだ。
あれだけ派手な音がすれば、ほら。リムだけじゃない、ぞろぞろと。
「どうやらこいつは私に用があるらしい!」
足の裏を擦りながら踏み留まり、腕を払って構える。
「見てるだけなんて出来ないわよ!」