霧雨の視界
少しの沈黙が流れて、イーシスは小さく息を吐き出した。
「……それが、あんたの答えなんだ」
向けられた視線を真っ直ぐ捉えて応えるその視線も、今度こそは揺らがなかった。
「はしたないじゃないの」
ラフィーユが発言するとユウは初めてその意図を理解した。
「……ウィッス」
この辺りはさすが、ヴィオレスタの血縁者といったところか。――制御品の有無など大した壁ではなかったのだ。本人にその意思があって且つ悟られないのであれば心の内から本音を探ることなど造作もないのである。
「いいよ。それで兄貴が救われなくても」
足を組み直して。イーシスは気怠そうにラフィーユへ視線を預ける。
「……分かりました」
大嫌いだった。
人の本音の為に平気で自分を犠牲にするあいつが。
突き放してしまえばいいものを、知ろうとするからこうなる。俺はずっと、そんな兄貴に呆れていたに違いない。だから、今日も変わらず無慈悲で。
無感情に。……淡々と。
「はっ、滑稽だな」
その声にイーシスは目を丸くした。
「貴様たちは何も分かってなどいない」