霧雨の視界



「本題に入らせていただきますね」

向かいのラフィーユは膝の上に両手を重ねて置いて、それから口を開いた。

「彼を、此方側に引き渡してくださいませんか」

予想はしていた。ユウの隣に座っていたリムは目を丸くして、

「戦士を辞めさせるってこと?」
「必然的にそうなります」

……違和感を感じた。

帰省だけなら辞めさせる必要性はほぼ皆無。なのにそうやって当たり前のように返すということはより確実性のある最もな理由が存在するということになる。

「もう少し具体的にお話しましょうか」

それは聞かずとも彼女から話してくれるようだった。

「……彼を」

しんと静まり返るリビング。ラフィーユは変わらぬ姿勢で、口を開く。


「私たち家族の手で処分させていただきたいのです」


――それは、あまりにも残酷で。

悲愴な現実だった。


「どうしてっ!」 

感情を爆発させ、咄嗟に立ち上がったのはリムである。

「可能性が絶たれたわけじゃないんです! なのにどうしてそうやって」
「じゃあ、あんたはアレに何処までしてやれる?」

イーシスは頬杖を付いて挑発的に、ふんと鼻で嘲り笑った。

「……死ねるか?」
 
 
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