霧雨の視界
――どうでもいい癖に。
「……、」
大嫌いなんだろ?
「……貴方」
ユウが視線を上げると、そこには一人の女性が立ち竦んでいた。
「りー君のパートナーさん?」
あっ。
「……ふふ、やっぱり」
女性はそう言って微笑んだ。
「そのままですもの。あの子が送ってくれた画像と」
ふんわりとした柔らかみを感じさせる垂れ目の瞳には常に夕日のような橙色の光が宿っている。よく似た暗い青の髪は、うねり、腰まで流して。
弟と違って裏切らない風貌に、だからこそすぐに気付くことができた。
「……初めまして」
女性は優しく微笑みかける。
「イーシスとリオンの母、ラフィーユです」
雨は変わらず、しとしとと静かに大地を濡らす。雨傘を差して見下ろすその女性、ラフィーユはユウがゆっくりと体を起こしていく最中、口を開いた。
「お話があります」