霧雨の視界
突如として銃声が鳴り響く。……知っていた。
だから、驚かなかった。
「……え?」
撃たれたのは――リオンである。背中から銃弾を撃ち込まれたその男は少しだけ背を反らし、ゆっくりと流れる時間の中で地面に倒れ、“突っ伏した”。
「ぁ……嫌……」
同じだった。
「リオン!」
「そういちいち喚くなうざってえ」
さらりと返した少年が構えた拳銃を下ろすのを横目、くっと表情を歪ませて近くにいたディディーは思わず胸ぐらに掴みかかる。
「てめえっ!」
少年、イーシスは変わらず見つめ返す。
「よくも……っよくもリオンを」
「いい加減黙れ低脳が。状況もよく理解してない癖して口を開くな」
「生意気なこと」
「俺が撃ち込んだのは麻酔弾」
ディディーの胸ぐらを掴む手の力が、緩んだ。
「兄貴は寝てるだけ」
そう言うと、イーシスはディディーの手をぱしっと弾いた。しとしとと静かな音を立てて降り注ぐ雨の中、地面に突っ伏す男を見つめて。
「……あんたら人間の十八番だな」
嘆くように、だけど静かに苛立ちを込めて呟いた。
「他人の不幸に意味もなく嘆き喚くのは」