霧雨の視界



まるで心を見透かされている。

左足からの蹴りを躱したが踏み込まれ、次いで右足の回し蹴りが襲う。刹那瞳を金色に瞬かせ、顔左側面を庇うようにして差し出した腕に紫色のオーラを集中させてそれはまるで磁石のように襲いくる右足をぎりぎりと押し留め、やがて弾く。

――そうに違いないのだ。彼の瞳は何の変化も見せていないようであって此方の動きしか見ていない。彼の耳に届くのは声であっても、恐らく。

「ッ、」

……心の声。

その場に右膝を付いたかと思えば左足をバネに、リオンは跳び上がりつつ右足爪先による蹴り上げを仕掛けた。防御、後一歩届かず顎を打ち上げられる。


見上げた灰色の空に、一瞬地面に突っ伏す男の映像が映り込んだ。


「が……ッ!」

息をつく間も与えずがら空きの鳩尾に蹴りを打ち込まれる。骨の軋む音が聞こえたのは多分気のせいじゃないだろう。ユウの体は軽々と吹き飛び地面を何度か転がり引きずって。此方はまだ突っ伏しているというのに、もう足音が迫ってくる。

結果なんて見え透いていた。――それなのに。

「……リ、オン……」


どうすれば。何が最善なのだと叫んでいる。

そんなのは知ったことか。未来は変わらないのだ、投げ出してしまえ。


あの時みたいに?
 
 
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