霧雨の視界
頬に走った青の閃光が全身から放出されるのは時間の問題だった。
ユウは感電を覚悟でピチカに飛び付き、その勢いのまま前方へ。彼女にだけは怪我させまいとしっかり抱き締めて、鋭い電撃を一身に受け止めながら転がる。
「っ、く……」
その呻き声にピチカははっと我に返った。
「ユウ!」
こればかりは笑い種で済まされるようなものでもない。黒焦げになって髪が派手に爆発するなんて何処の国の冗談だ。現実はそれ以上にただ見ただけでは分からないような負担がカラダ全体に伸し掛かってくる。
「いい……お前は下がっていろ」
だがそれがどれほどのものなのか説明してる暇は恐らく、ない。
「状況は凡そ把握してるつもりだ」
案じるピチカを押し退けるようにして、ユウはふらりと立ち上がる。
「それに……」
視線を向けたが、リオンは相変わらずだった。夕日を閉じ込めたかのような橙色の瞳はいつもと変わらないように見て取れるがぼうっとしてるようにも窺える。
どうせ、言ったところで伝わらないだろうが。
「念の為聞いておく。これは何の冗談だ」
リオンは立ち止まったまま一向に動かない。
「貴様の目的がどうであれ」
……だが。
「許される行為では」
それは唐突に。音を潜めて訪れる。