霧雨の視界
「ユウ!」
久方ぶりだ。この味だけは。
「……そう騒ぐな」
強がってようやく立ち上がれたものの、案の定ふらついて両側からマリオとルイージに支えられてしまった。そこでルイージははっと気付く。
「ユウ……目が、赤くなって……」
――彼の瞳は普段澄んだ紫であるが、超能力を発動する際は獣が暗闇に目を光らせたような金色に変わる。だが、もうひとつの変化。
赤く流れる血潮の如く染まる時は。
「見えたのね?」
そう問いかけたのはリムだった。
「こんなこと、聞きたくないけど」
歩み寄ってくる様子にゆっくりと視線を返して。
「その対象は誰だったの?」
この扉の向こうに。そしてそれが、無事である保証もない。
だからこそ答えることに躊躇が生ずる。今度こそ?
……変えられるはずがない。
未来はもう。
「っ、」
突如として大きな音が響き渡る。何かが外の壁にぶつかったらしい。
ユウは顔を顰め、迷わず外へ飛び出した。