霧雨の視界



エントランスホール。扉へ駆けつけようとしたところ、視界が歪んだ。

途端に安定性を失ってよろめき、辿り着く前に足がもつれて転倒。たまたま近くを通りかかったマリオとルイージが顔を見合わせ、駆け寄った。

「ユウ!」

呼びかける声が、遠ざかって。

昨日よりもずっと酷い。頭の中から執拗に叩かれているみたいで鈍器のようなもので殴られたかのような痛みが何度も襲った。既に感覚が麻痺してきている手でおもむろに頭を抱え、ガクガクと震えながら縮こまる。吐き気が催し、汗が滲んだ。


――暗転した世界の中で、映像が映し出される。

自分は見知った人物と向き合っていた。青い大きな耳が特徴的で、犬のようだとからかったのを鮮明に覚えている。その発言を許し、喜ぶような奴だった。

少しふらつきながら駆け出したのは自分で。

……戦っている? 何故? 自身は能力を駆使して追い詰めていく。


そして。

真っ赤な鮮血が視界を濡らした。


映像はぷつんと途切れる。


「……ッ!」

どくんと心臓が跳ねて現実に引き戻されるとユウは目を開いた。

急いで体を起こそうと腕を立てたが、限界で。

「っか、ァ」

想像していた以上に。

吐血するこの感覚は気持ちが悪かった。
 
 
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