霧雨の視界
そうして案内されたのはリビングだった。
ローテーブルを挟んで向かい合ったソファーに腰をかけて。一方で彼のパートナーであるウルフが煙草を吹かしながら、もう一方ではユウがつまらなそうに腕と足を組んで待機していた。抜群に相性の悪そうな二人だ、会話などなかったのだろう。
「座って」
促されるがまま、リオンはユウの隣へ。
「……率直に言うね」
ルーティは続けて腰を下ろすと、真面目な顔つきで告げた。
「二人に、街の調査を依頼したいんだ」
これは一体どういうことだろうか。
「ルーティ」
「や、やっぱりこういうのは順を追って説明した方がいいよね」
沈黙が訪れるよりも早くウルフが呼ぶと、ルーティは苦笑いを浮かべた。続けて予めローテーブルの上に置いてあった幾つかの紙を手に取り、並べて。
「ここ一週間で受け取った依頼届。実際に見てもらった方が早いと思う」
ユウとリオンはそれぞれ別の紙を手に取って、内容に目を通した。
――ここに並べられた依頼届の内容はどれも同じだった。
レイアーゼ都市、中央街で不審な事件が多発している。しっかりと固定してあったはずの鉄骨が道に崩れてきたり、怪しい黒い影が天を跨いだり。行方不明になり、戻ってはきたが記憶を喪失している者、変な声を聞いた者……
事件解決を願っての、街の調査依頼。
「……ただのパトロールなら警察にでも任せておけ」
ユウはふう、と短く息を吐き出して。
「と、言いたいところだが。そういうわけにもいかないと」