霧雨の視界
脇の傘立てから適当に傘を拝借して外に出る。傘を差して歩いてみると軋んだ扉が風に吹かれたのか派手に閉まった。リオンはそれで思わず振り返って。
途端、変化が訪れた。
ざわざわ、ざわざわと一人ではないもっと多くの人間の囁く声が聞こえてきて。
しかしそこに人影は見つからなかった。声がひしめく。まるで人混みの中を歩くかのような酷い感覚に侵されながらリオンはゆっくりと足を進める。そうして中庭の中央辺りに差し掛かったその時。
――あれが人の心を覗き見る化け物の家系か。
「……え?」
リオンは小さく目を開いた。
まだ子供じゃない。
いつ本性を現すか知れたものじゃないわ。
「っ、」
……ああ。
知っている。
この言葉の羅列を私は知っている。
「やめろ、」
夢にまで見た外の世界。
教えを破ってこっそり窓から抜け出した。
「ぁ、」
なんであんたみたいな奴がこの森にいるのよ。
――化け物のクセに。