霧雨の視界
表情。変化。微々たるものであろうとカービィはそれを見逃さなかった。
「さっき、エントランスホールで見かけたよ」
「……荷物は」
ユウが食い付く。
「何か、持っていなかったか?」
対するカービィは疑問符を浮かべて。
「……手ぶらだったけど」
内心ほっとした。いやそんな場合じゃないと思い直して、ユウはカービィを差し置き駆け出す。その後の行動は自分で行って確かめる他ないだろう。
カービィは止めずに見送った。――なんだかんだ気にしてんじゃん。
素直じゃないんだから。
「……?」
リオンはエントランスホールから扉を開いて外に顔を覗かせ、疑問符を浮かべた。
確かに、声が聞こえたのだ。繰り返し、名前を呼ぶ声が。
その声を頼りに今朝は目が覚めた。屋敷の中をうろうろと彷徨って、探して、ふと昨夜のことについてユウに本心を打ち明けようとも思ったが、入れ違い。
迷った挙げ句、声の正体を突き止めることにした。
ところが。誘われるがままに外を覗いたが人の影はない。あんなにはっきりとした声が幻聴であるはずも、誰かの単なる独り言であるはずもないのだ。読心力を得ている者としてそれくらいの違いは分かる。
霧雨。一概に雨といってもそう酷くないものだった。