霧雨の視界



暗い顔で部屋の中を覗いて、溜め息を吐くものだから気になったのよ。

声をかけたら貴方の居場所を訊ねるものだから。


知らないわ、って答えたらふらっと何処かに行っちゃったけど。


どうして自分は肝心な時に頭が回らないんだ。ユウは自分に似合わず全力疾走で屋敷の中を駆け巡っていた。自室、リビング、洗面所、風呂場、バトルルーム。

……いずれも見つかる気配すらない。


何故。どうして。


私が何処に居たところであいつは勝手に見つけ出すのに――


「あっぶな!」

曲がり角で衝突しそうになったカービィを既の所で躱す。

だがしかし、後退してよろめいたところをカービィは手首を掴んで。

「……気をつけなよ」

ユウが体勢を立て直すとカービィは手首を解放した。

「てか、珍しいね。何かあったの?」

珍しく肌が汗ばんでいる。

だけどすぐには答えられなかった。素直になれない、悪い癖。

「……もしかして」

カービィは続けて口を開く。

「リオンのこと?」
 
 
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