霧雨の視界
リンクは振り返って答える。
「見かけてませんよ」
そう言って調理作業を再開するリンクをユウはあっけらかんとして見ていた。
いや、……そりゃそうか。自分だって彼が部屋を出た直後に目が覚めただけなのかもしれないのだ。だとすれば真っ先に向かうべきは洗面所だ。だがしかし下手に探れば今度は入れ違いになるかもしれない。それだけは、
……何故、気にかける。
突き放したのは、自分だろう。
「えーと、豆腐とトーバンジャーと、はくりゅう?」
メモ用紙を手に買ってくるものを口に出して確認するのはトゥーンである。
「豆板醤と、白滝(しらたき)ですよ」
「分からなければ店員の方に見せてあげてくださいね」
リンクに続いてゼルダが微笑むと、トゥーンは「よし!」と意気込んだ。
どうやら、今日は外が雨だというので暇を持て余している子供達に買い物を任せることにしたらしい。ああしてすんなりと言うことを聞くのも、何もしないで過ごすよりはずっとマシだと感じたからだろう。
子供は視野が広い。何でもない世界の中に何でも見つける。
「あら。こんなところにいたの」
トゥーンを見送った後で入れ替わるようにしてやって来たのはサムスだった。
声をかけられたユウは怪訝そうに視線を返す。
「リオンが探してたわよ」
――ほら。入れ違った。
「何処にいた!?」