霧雨の視界
今度は先程よりも長い沈黙が訪れた。
望まぬ未来。望まぬ想い。この目に映るのは不幸ばかりだ。
「……リオン」
ユウは静かにその名を呼んで。
「戦士を辞めろ」
天井に視線を戻した時、視界の端でリオンが布団の布を強く握るのをユウは見逃さなかった。だけどリオンは叫び散らすでもなく、小さく口を開く。
「そうするよ」
明らかに本心ではなかった。
「ユウ」
「なんだ」
「私が辞めれば、未来は変わるのか?」
胸の奥で古い傷が疼いた。
それを隠すように。ユウは寝返りを打って背中を向ける。
「……ああ」
嘘だった。
「……よかった」
リオンはにこりと笑う。
「ユウ。私はな、ここにいる皆が大好きなんだ。貴殿も含めて」
胸がずきずきと痛む。
「私がそうすることで彼らを傷付けずに済むというのなら」
軋む。
「……私は」
最後の声だけは。
聞こえないようにそっと耳を塞いだ。