霧雨の視界



ユウって感じ悪くなったよな。まあ仕方ないよね。あんな能力。


僕だったら耐えられない。


廊下を歩くと誰かの声が聞こえてくる。実際、廊下は普段より静かだったが声とは何処にでも溢れているものだ。……それが今日ばかりはいやに耳に障る。

そういう能力だった。

少し視線を落として歩くリオンの能力は、心の中を読み取る能力。読み取った言葉の羅列が声となり頭に響く。

普段は、こうして黒の鉢巻きを目隠しに用いることで制御が可能だった。今日は、調子が悪いようだ。少し周りの音や声を気にしただけで、能力はその制御でさえも容易く突破して声を響かせる。

――彼とは違う、目に見えるのはいつも“現実”だった。

「あっ」

リオンは声に釣られて顔を上げる。

「ちょうどよかった」

ルーティ・フォン。少年。だがX部隊のリーダーを務めている。

「今、探しに行こうと思ってたところなんだ」

リオンは怪訝そうに見つめた。

「依頼だよ。詳しく話したいからこっちに来て」
 
 
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