霧雨の視界
ひんやりとした風が吹き抜ける。
紫色の髪が揺れる最中で、頬を伝ったそれがこぼれ落ちるのを見た。
「期待していたのかもしれませんね」
能力に反して何も出来なかった自分を、許してくれるその言葉を。
「……否定してほしかったんやな」
ただ、他の誰とも変わらない予想通りの言葉に。
ほら見ろと自分を嘲った。
「能力者である以前に一人の人間だってこと」
リムは服の裾をきゅっと握った。
「彼らが。必ずしも能力を望んでいるわけではないということ」
そうやって突き放す誰かにはなりたくないって思っていたはずなのに。
悪い心が疼いて、気付けば叫んでいた。
……能力者じゃなくたって、分かることじゃない。
そんなの、傷付くに決まってるじゃない。
「無責任やろけど、別に謝ればええのとちゃうん?」
「馬鹿なこと言わないで。そんな簡単な話じゃないのよ?」
ドンキーの発言にリムは溜め息を吐いた。
「……でも。何も出来なかったというのは事実です」
リンクはぽつりと口を開く。
「後のことは、本人次第ですよ――」