霧雨の視界



「自分の能力の程度くらい分かるだろks」

イーシスは立ち上がった。

「そこまで進行が早いなら制御品待ってる暇なんてねえよ」

進み出て、リオンのすぐ脇を通り抜ける直前に呟く。


――人殺しにはなりたくないだろ。


「イーシス!」

自動式の扉が開き、出ていくのをリオンは慌てたように振り返って名前を呼び、その後を追った。ユウはいつの間にか沈黙していて。

「……ほんまか?」

ゆっくりと視線を起こし、ぼうっとドンキーを見つめる。

「さっきの話」


じわり、じわりと。

そして弾ける。


「ぁ」

街で見たのよりずっと長い予兆だった。

視界の暗転を許せば、声は急激に遠ざかって。暗闇の中で赤く燃ゆる目を覚まし、瞳孔が獣のようにかっと開く。映像は遠退く最中でフェードアウト。


青に混じって。

黒い髪が垂れるのを見た。
 
 
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