霧雨の視界
さすがのリオンもすぐに顔を上げた。
「っな……」
「思い当たる節なんて幾らでもあるだろ」
誰かを傷付けるだけじゃない。自分だって傷付く可能性がある。
覚悟だけの問題じゃどうにもならないんだよ。箍を外せば自分の命だけじゃない大勢の人が犠牲になる。部隊にだって汚名を着せることになるかもしれない。
「そんなの、」
制御品云々の問題じゃねえんだよ。
「私はっ」
いい加減気付けよ。
制御、しきれてないだろ。
「リオン」
はっと目を開き、気付いた時には遅かった。
「何を騒いでいる」
……今のは。
彼が直接発した言葉じゃない。心の中で思い浮かべた言葉を、自身が声として聞き入れ、ただ普通に会話するように返していた。けれど。
皆には聞こえていない。
「どないしたんや」
当然だ。
心の声なんてものは。
「……リオン?」
能力者でなければ聞こえるはずもなかったのだから。