霧雨の視界
視界が瞬いて暗転する。
――どうして。
良くない未来を見るばかりで。
貴方は何も出来ないの!
「イーシス!」
はっと目を開く。心臓の音が頭の中まで響いてくるようで、暫くは呆然とその景色を眺めた。立ち上がったリオンがイーシスを叱っている。
「兄貴の都合を押し付けんなよ」
イーシスは表情を何ひとつ変えずに足を組み直す。
「責めて突き放すのは俺のやり方。変に媚びられるのが嫌いなだけ」
はあ、と小さく溜め息。
「例えそうでなかったにしろ、そういう癖が付いてんだよ」
次第に心臓の鼓動が落ち着いていくのを感じて、ユウはすうっと吸った息を短く吐き出した。……子供にちょっかいをかけられたくらいで。私も未熟だな。
「で、いつ突っ込もうか迷ってたんだけど」
イーシスは目を細めて。
「鉢巻きはどうしたんだよ」
その時、リオンは初めてたじろいだ。
「て、敵に……接触した時、油断して」
「俺たち。裸眼が一番危険だって知ってるよな」
否定できない。それは、と消え入りそうな声で返して。
「そういう可能性を踏まえて父さんも母さんも反対したんだろ」
リオンは視線を落として口をつぐむ。
「……ま、それなら十分理由は付くよな」
次の瞬間イーシスの口から放たれた言葉に今度は誰もが目を開く。
「率直に言わせてもらう。兄貴。戦士を辞めろ」