霧雨の視界
つんとした吊り目。瞳の色はサングラスのようにレンズに黒みがかかったアイガードを着用していて窺えない。それだけでも兄のリオンとは似つかないのに、艶めく金色の髪がより一層彼の正体を疑ってしまう。
唯一の共通点は前髪に入った黒のメッシュくらいだ。
和を思わせる青い衣服を身にまとい、頭には黒いたれ耳。
……と、容姿の説明はここまで。イーシスと名乗ったその少年は何か不満があるのか先程からじっとユウを見つめている。いや、しかし気付いた時には遅かった。
「未来を見通す能力ねぇ」
ぼそっと呟かれれば心臓が跳ねた。
驚くほどのことではない。が、油断したのだ。……彼の弟なら。ヴィオレスタの家系に生まれたのなら。心を読み取るくらい造作もないということを。
「へえ。最近になってまた症状が出てんだ」
表情に影を落としてにやりと笑う。
「今度は何が見えてんだか」
――未来は変わったかもしれないじゃない!
「ま、見えたところで」
鼓動が波打つ。深く。
「どうせまた見殺しにすんだろ?」
速く。
「“あの時”みたいにさ」