霧雨の視界
誰とも関わりたくない。
「ユウ!」
それなのに。
「今度は何の本を読んでいるんだ?」
こいつは執拗に詰め寄ってくる。
――リオン・ヴィオレスタ。
「……?」
はあ、と溜め息を吐いて読んでいたページに栞を挟み、傍らに置いて立ち上がる。
「ついてくるな」
ぴしゃりと言いとどめて、扉へ向かう。しつこい、と呟いて。三つ編みに編んだ後ろ髪が揺れる。――ユウ・ブラン。冒頭で語りを入れたのはこの男だった。
ぱたん、と扉が閉まった後でリオンはユウが先程ベッドの縁に腰を下ろして読んでいた本を手に取った。……決して仲が悪いわけではないのだ。
距離。位置の問題ではなく、心と心。
パートナーなら、とは求めすぎた結果だろうか。近付けば、遠ざかる。いや、彼の場合は“遠ざける”。それが生き物であれば極力関わろうとしない。
その理由をリオンは知っていた。聞けるような仲にはもちろん進展していなかったのだが、言わないのであれば探ればいいのだ。彼がその目に見るのが未来なら。
自分のこの目に見えるのは。……