霧雨の視界
あの屋敷にいる人たちは違う。
大丈夫。自分だって成長したのだから。
何が聞こえたって――
「リオン」
はっと目を開く。ゆっくりと視線を向ければ、ユウが心配そうに見つめていた。
「な、にが?」
「耳が遠くなったのか」
リオンはぽかんとしている。
「さっきから呼んでいたんだが」
「……え、」
「顔色も良くない」
気付けば屋敷の前まで来ていた。じわじわと声や音が返ってくる。中庭で子供たちがはしゃぐ声、それによって生ずる地面を蹴る音。
「リオン……」
誰のものかも分からない声はいつの間にか消え失せていて。
「やはり、あれが無いと」
「っそんなことは!」
思わず声を上げてしまった。子供たちが立ち止まる。
え、なに? リオン、どうしたんだろう。
「……おっ」
今しがた目の前の屋敷の扉から出てきたのはネロだった。後からレッド、ローナ、シフォンが出てきた辺り、遊びというよりは任務なのだろう。
「リオン」
ネロはポケットに手を突っ込んだ姿勢で口を開く。
「お前の弟さん。来てたぞ」