霧雨の視界
――亜空間。
ダークシャドウの基地はそこにある。最後、ダークウルフが抜けるとゲートはそれを境にぐるぐると渦巻きながら徐々に色褪せていき、やがて消滅。
「ウルフ」
名前を呼ばれてはっと立ち止まる。
「何か言われたのか」
どくん、どくんと鼓動が波打つ。
「……単なる負け惜しみです」
ダークウルフは薄ら笑いを浮かべて答える。
「リーダーの耳にお入れするまでもありません」
それを聞くと、ダークピカチュウは視線を外して歩きだした。
――心を読まれたのか。
誰かが誤って触れてしまわないように。壊して奪い去らないように。
深く、遠く、仕舞い込んだはずだったのに。
「安心しな」
ダークウルフは目を開いて顔を上げる。
「同じ能力者なら分かるんだよ」
にやりと笑って、ダークルカリオは振り返る。
「何を恐れているのか」
くそ、どいつもこいつも。
眉を顰めて。ぎり、と奥歯を噛み締めるダークウルフを、ダークピカチュウは尻目に捉えただ静かに見つめていた。