霧雨の視界
情報は惜しいが、見送る他なかった。
ダークウルフが深い紫色の渦を巻く不可思議なゲートを何の変哲もない建物の壁より腕を薙いで切り開くと、ダークルカリオはダークミュウツーを肩に担いで二度と此方を振り返る様子もなくひょいとゲートのその奥へ、飛び込んだ。
視線を突き立てて目を見張る。此方に一瞥くれたダークピカチュウの瞳は光差さない深い闇を表しているかの如く吸い込まれそうなほど漆黒で。
「待ってくれ」
最後、ゲートを潜ろうとしたダークウルフを不意にリオンが呼び止める。
「本当は気付いているのではないか?」
――長く足を留めることもなく、黙ったままゲートを抜ける。
駆け寄ってみたが、それよりも早くゲートは壁の中に溶けるように消滅。結局、収穫がないまま敵を逃すという結果になってしまった。
……それでも。
この心臓が変わらず鼓動を刻んでいることだけ感謝しよう。
「リオン」
忘れてはいけない。ユウは振り返る。
「……その、平気なのか」
ただの目隠しとは訳が違う。事情は知っていた。あれが無くては。
「見くびってもらっては困るぞ」
リオンは得意げにふふんと笑って応える。
「私は人よりタフな男なのだから」