霧雨の視界
顔を上げたリオンは呆然としていた。
「……目は平気だ」
こめかみや眉間に指で触れて。
「ただ……」
――見れば、リオンがいつも目隠しのようにして使用していた鉢巻きが綺麗さっぱり無くなってしまっていた。気付かぬ内に落としたというわけでもなさそうだし、となるとダークルカリオはさっきの一瞬でこんな真似を?
「チームの名折れだ。たった二匹を相手に手間取りやがって」
遅れて、倒れたダークミュウツーの傍らに現れたのは狼の耳が映える男。その眼帯や服装から察するに男の名はダークウルフといったところだろう。
そして前方の建物、小屋根の上に佇む少年だ。彼自身はダークシャドウを統率するリーダーのダークピカチュウだと名を語っていたが、何処か見覚えがある。
いや、……疑りすぎだ。いくら行方知れずだからといって。
「くくっ」
ダークウルフの嫌みなど気にする様子もなく、ダークルカリオはふらりと前に踏み出した。直ぐ様構えたが、此方の体力も残り僅かだ。まさかああして増援を呼ぶとは思いもしなかった。だからといって、収穫がないのでは。欲が、渦を巻く。
また一歩。ユウは顔を顰める。――だがしかし。
「ッ、」
行く手を阻むようにして、ダークルカリオの足下に黒い雷が落とされる。
「我らが主、マスター様からの御命令だ。この場は撤退する」
転機とも言えよう。肩の荷が下りた気分だった。
「……チッ」
ダークルカリオは舌打ちをこぼして。